アダルトチルドレンとは?
アダルトチルドレン(AC)とは、幼少期に家庭内で十分な安心感や愛情を得られなかったことなどが原因で、大人になってからも生きづらさや対人関係の困難を抱えてしまう人々を指す言葉です。もともとはアルコール依存症の親のもとで育った子どもが成人したケースを示す「Adult Children of Alcoholics(ACoA)」として使われていましたが、その後は親の虐待・ネグレクト、依存症、家庭内暴力など、さまざまな“機能不全家族”で育った人々にも当てはまる概念として広がりました。
成り立ちについて
1. カナダでの始まり
アダルトチルドレンの原点としてよく言及されるのが、1969年にカナダのマーガレット・コーク(R. Margaret Cork)が著した『The forgotten children: a study of children with alcoholic parents』です。彼女はそこで、アルコール依存症の親を持つ子どもたちが多くの問題を抱えることを示し、「忘れられた子どもたち」という視点を提示しました。
2. アメリカでの概念の確立
その後、アメリカのソーシャルワーカーだったクラウディア・ブラックがアルコール依存症者の子どもの援助を行う過程で、大人(adult)になっても子ども(children)のころの問題を引きずる人々という意味を込めて、「Adult Children of Alcoholics(ACoA)」と名づけたのが起源とされています。
当初はアルコール依存症による家庭環境に限定されていましたが、1980年代ごろから「機能不全家族全般に育った子どもたち」も同様の問題を抱えることがわかり、「Adult Children of Dysfunctional Family(ACOD)」という形で対象が広がっていきました。
3. 日本への導入
日本では1989年に精神科医の斎藤学(さいとうさとる)がクラウディア・ブラックの著書『It will never happen to me(邦題:私は親のようにならない)』を翻訳出版したことをきっかけに、アダルトチルドレンという概念が急速に広まりました。
当時、多くの人が「自分も当てはまるのではないか」と気づき、専門家や当事者グループの間だけでなく一般社会でも大きな話題となりました。ただし、医学的・精神医学的には正式な診断名ではなく、自分自身や周囲の人が「子ども時代の家庭環境に由来する生きづらさ」を再認識するための“自覚用語”という位置づけになります。
アダルトチルドレンの特徴
- 幼少期に安全で安定した愛情を十分に得られなかった影響で、低い自尊心や自己評価を抱えやすい
- 人間関係で相手に合わせすぎたり、逆に距離を置いてしまうなど、極端に振れやすい
- 完璧主義や過度の責任感を負いやすく、他人からの評価に敏感
- 感情を抑圧しすぎて爆発する、もしくは感情表現そのものが苦手である
これらはあくまでも“傾向”であり、必ずこうなるとは限りません。また、親が特定の依存症や問題行動を抱えているかどうかにかかわらず「自分が生育環境によって大きな傷を受け、その影響が大人になっても続いているかもしれない」と自覚できれば、アダルトチルドレンの可能性を視野に入れていいとされています。
まとめ
アダルトチルドレンは本来、アルコール依存症の家庭など「機能不全家族」で育った人々が、大人になっても抱え続ける生きづらさに光を当てるために生まれた概念です。その背景には、1969年のマーガレット・コークの研究や、アメリカでのアルコール依存症治療の過程での気づきがあります。日本では斎藤学の翻訳書がきっかけとなって広まり、多くの人が“子ども時代からの心の傷”と向き合う糸口になりました。
今ではこのアダルトチルドレンという言葉をきっかけに、自分に刻まれているトラウマと向き合う方が増えています。トラウマはきちんとケアしていくことで改善されていきます。そのためにも、トラウマケアの知識がある方の下で回復に取り組んでいくことが大切です。認知的な部分だけではなく、身体としての反応も改善することでアダルトチルドレンの苦悩は楽になっていきます。カウンセラーを探すときはトラウマケアができる方を探して受けていただきたいです。そこがわかっていないとアダルトチルドレンの傷を掘り返されて、余計に傷つくようなことにもなりかねません。当サイトでも「カウンセリング」を行っていますので、ご利用の検討をしていただければと思います。