感情や行動の不安定さは、人間関係の捉え方の不安定さからきていることに気付くことから回復が始まります。境界性パーソナリティ障害は人間関係の障害です。現実的な人間関係の場面で自信がなく、自分がどう評価されているのかとても気になってしまいますし、見捨てられたのではないかと不安になりやすいのです。その不安から回復できずに、部分的対象関係を持った幼児の状態に戻ってしまうのです。部分的対象関係というのは、例えば優しい母親と怒る母親を別の人物として扱ってしまうことです。良い部分と悪い部分を持っている一人の人間として認識することができていません。優しい母親だけを対象にしている場合は、信頼し依存して見捨てられないようにすがりつきます。怒る母親だけを対象にしている場合は、自分を裏切った人間だと罵倒し、激しい怒りとともに母親に責めたてます。もちろん、こういった人間関係は母親だけに限りません。
境界性パーソナリティ障害の人は、このような部分対象関係を持った幼児の状態のときもありますが、大人の人格も持っています。なので、現実的な問題を明らかにし、どのように対応していけば良いのか大人の部分で解決していくことで、幼児の状態を減らしていきます。以下に回復のステップを述べていきます。
ステップ1.自分の極端さに気付く
白か黒、良いか悪いといったall or
nothingの考え方を持っています。他者に対して、良い人間か悪い人間か二者択一の判断をくだします。実際にはグレーもありますし、人は良い面も悪い面も持っているのが普通です。ですが、それを受け入れることができません。なので、まずはこのような極端な考え方をするタイプなのだと気付く必要があります。
ステップ2.他者に解決を求めていた
「誰々が悪い」とか「誰々のせいだ」というようによく責任を他者に押し付けます。ですが、その言葉の裏には「だから、なんとかして助けて」という意味があります。でも、他の人が何とか解決しようとしてくれる内容にも満足ができません。いつまでも相手を責め続ける事になります。なので、自分で解決していく必要があるという認識をもつ必要があります。心がついていかなくても、まずは頭で理解してください。
ステップ3.他者には他者の事情がある
自分の思い通りに動いてくれないからといって責めるのは自分勝手だと理解します。誠実な人でも、その人の事情があり自分の都合に合わせていつでも付き合ってくれるわけではないのです。例え、自分の要求通りに動いてくれなかったとしても、それは自分を見捨てたわけではないとだんだん理解できるようになってきます。
ステップ4.他者に頼るのは確実ではない
頼った相手が突然いなくなる可能性はあります。また、自分だけを見てくれるわけでもありません。自分ではないものは、自分の思い通りにはなりません。他者に頼ろうとしている限り、確実さや安定は望めないのです。この段階でも、まだ自分が頼りになるとは思えていないかもしれませんが、他人に過度に頼るのは不安や失望のもとになることを理解してください。もちろん、適度に人に頼るのは悪くありません。
ステップ5.自分で解決するしかない
問題は自分の中にあります。他人が何とかしてくれるわけではありません。どうしてほしいかという他力本願の考え方ではなく、どうしたいのかという自分主体の考え方を行うようにしていきます。どうしたいのか、どうなりたいのかというのは自分がもっともわかっているはずです。誰かに依存するのではなく、適度な距離を取るようにします。相手には相手の生活があるのだということを理解して、思いやることが大切なのです。そうすることで互いに尊重しあい、長く付き合うことができるようになります。
最後に、回復への道程はとても長いです。一歩ずつ前へ進んでいくしかありません。今の苦しさを一生抱えて生きるよりも、少しずつでも回復して楽に生きて行けるようになっていただきたいです。