アダルトチルドレン(AC)という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。これは、子ども時代に機能不全な家庭環境に身を置いたことにより、成人してからも不安や生きづらさを感じ続ける状態を指します。しかしアダルトチルドレンという名称は、もともと「アルコール依存症の親をもつ子ども」を指すものとしてアメリカで生まれ、その後、虐待や家庭内不和、育児放棄など幅広い機能不全家族に該当する方へと拡張された概念でもあります。
アダルトチルドレンとは「病名」ではない
アダルトチルドレンは医学的な診断名ではありません。そのため「アダルトチルドレンと診断されたから治療を受ける」というよりも、自分の生きづらさの原因を見つめ直し、過去の家庭環境とどんなふうに関係しているのかを理解していくことが重要です。
代表的な特徴
1. 自己評価や自尊心が低い
多くのアダルトチルドレンが抱えている共通点として、「自分には価値がない」「愛される資格がない」という否定的な自己イメージがあります。幼少期に十分に認められなかった経験や、愛情を条件付きでしか得られなかった体験からこのような思い込みが形成されていることが少なくありません。
2. 人間関係の偏り
「嫌われたくない」「見捨てられたくない」といった不安が強く、相手に過剰に合わせてしまったり、逆に親密になることが怖くて距離を取りすぎてしまう場合があります。「自分の心を守るために人との関係をコントロールする」という行動パターンが身についてしまい、孤立感につながることもあります。
3. 過度な責任感や罪悪感
自分が“いい子”でいないと家族が崩壊してしまう、あるいは自分が家族の問題を引き起こしているのではないかと考えやすく、根拠のない責任感や罪悪感に苦しむことがあります。それがストレスや対人緊張を高める要因にもなりやすいと言われています。
アダルトチルドレンが感じる生きづらさ
アダルトチルドレンの多くは、人間関係や自分自身の気持ちの扱い方に困難さを抱えることで、生きづらさを感じると言われています。たとえば、恋愛において過度に相手に依存してしまう、あるいは職場の人間関係で「断ることができない」「完璧にこなさなければならない」というプレッシャーに苦しんでしまうなど、様々な形で生きづらさが現れるのです。
回復や克服のためのポイント
1. 自分の過去を客観的に振り返る
子ども時代の家庭環境を整理して、「どんな思いを抱えていたのか」「どんな感情を封印してきたのか」を改めて見つめる作業は、回復の第一歩になります。自分が家庭内でどのような役割を引き受けていたのかを知ることも大切でしょう。
2. カウンセリング・専門家への相談
一人で抱え込まず、カウンセリングなど専門的なサポートを受けることは非常に効果的です。認知行動療法やトラウマケアといった手法を通して、思考の偏りや傷ついた部分を少しずつ癒していくことが可能です。カウンセラーとの対話の中で、自分が本当に求めているものや、新しい視点に気づくケースも少なくありません。
3. 安全な人間関係を築く
安心して話せる友人や仲間、自助グループなどで体験を分かち合うことで、自分を否定しないで受け止めてもらえる心地よさを実感できます。こうした「居場所」を持つことは、自己肯定感の回復にもつながりやすいとされています。
4. セルフケアの習慣化
アダルトチルドレンの方は「自分よりも、人のために動かなくては」という思いが根強いケースが多く、疲れを溜め込んでしまうことが少なくありません。心身のメンテナンスやリラクゼーションを意識し、セルフケアとして運動や趣味の時間を確保することなどもポイントです。
まとめ
アダルトチルドレンは「大人になっても、子ども時代の家庭環境から受けた心の傷によって生きづらさを抱えている人」のことを指しますが、これは病名ではなく、状態や概念を表す言葉に過ぎません。自分のつらさを「根性論で解決すべきもの」と捉えるのではなく、「機能不全だった家族環境からくる影響が長引いているかもしれない」と受け止めることも大切です。それは決して「親を責める」ために振り返るのではなく、あくまで「自分を楽にする」「自分の人生を取り戻す」ための一歩です。
心理カウンセラーとしては、傷ついている部分を一緒に整理し、現実を客観視するお手伝いをすることで、クライアントさんが少しでも「自分らしく」生きられるようサポートしていきたいと考えています。また、身体にその時の記憶が残っていて反応を起こしていることが多々あるので、そのあたりのケアをしていくことが大切だと考えています。アダルトチルドレンに悩む方は、ぜひ専門家や安心できる人とつながりながら、少しずつ自分のペースで癒しのプロセスを進めてみてください。あなたは一人ではありませんし、今からでも回復を目指すことができます。自分に優しく、自分らしい道を選び取る勇気を持ってみませんか。
もし一人で踏み出すことが難しいと感じるときは、このサイトに居場所を見つけたり、専門家やカウンセラーにぜひ相談してみてください。きっと、あなたの体験や気持ちを受け止めて、一歩進むためのサポートをしてくれるはずです。