アダルトチルドレン相談室

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鬱(うつ)

 風邪を引いたら、熱が出て、頭が痛くなり、盲腸になったらお腹が痛くなります。人のからだは病気になると何らかの症状が現れてきます。うつ病でもこれと同じようにさまざまな症状が現れるのです。ただし、うつ病が他の病気と違うところは、こころとからだの両方に症状が出ることです。また、うつ病は死に至る病です。早めに治療することをお勧めします。

 

からだの症状

うつ病は、単なるこころの問題(気持ちの持ちよう)として考えられがちですが、症状は体にも現れてきます。からだの症状にはさまざまなものがあります。
以下のような症状が2週間以上もずっと続いているのに、「理由が分からない……」、「病院に行っても治らない……」、という人はうつ病を疑ってみてください。

・眠れない、朝早く目がさめる、夜中に何度も目を覚ます
・体がだるい、疲れやすい
・何を食べてもおいしくない
・性欲がおちる
・ときどきめまいがする
・息切れする、息苦しい
・頭痛がする
・微熱が続く
・肩がこる
・体がしびれる
・胃のもたれ、ムカツキがある
・食欲がない
・生理不順
・下痢、便秘

 

こころの症状

うつ病の大きな2つのこころの症状は、「憂うつ感」と「興味・関心の低下」です。
1.憂うつ感-感情面
 「憂うつだ」、「悲しい」、「何の希望もない」、「落ち込んでいる」というような感情です。このような症状が午前中にひどく、午後から夕方にかけて改善してくるという“日内変動”があるのもうつ病の特徴の1つです。 また自殺願望を持つようになり、自殺行為を繰り返すようになることもあります。
2.興味・関心の低下-意欲面
・今まで好きだったことにも打ち込めなくなる
・新聞を読む、テレビなどを見る気がしなくなる
・仕事への意欲が低下する
・何をするにもおっくうになる

軽いうつ病の場合は、このようなこころの症状が出ても、なんとか仕事などをこなしていけるため、うつ病の発見や受診を遅らせてしまいます。

その他のこころの症状が現れることもあります。

・物事の判断がにぶくなる
・自分に自信がなくなる
・自分を責める
・ささいなことから不安に陥りやすい

 風邪の引きはじめは、「ちょっと体調がおかしい…」という程度です。うつ病もこれと同じで、初期の軽い時期はこころよりも、からだのほうがちょっとおかしい状態が続きます。これらのからだの症状は、少し無理をすれば会社で仕事をしたり、日常生活をふつうに行えるため、ほとんどの人がうつ病を疑うことなく生活しています。また、このような軽症のうつ病の時期は、本人も周囲の人も「からだの病気だ」と思っているため、内科などを受診し、「異常がない」「原因が分からない」、「気のせい」などといわれ不安になっています。

 ここで大切なことはからだの不調にもうつ病の可能性があることを知っておくことです。これまで、原因が分からずに「眠れない・・」、「頭痛が続く」とからだの変調に悩まされていた人は、うつ病の症状や生活環境に当てはまるところがいくつかあるのではないでしょうか?

 

仮面うつ病

からだの症状が前面に出ているうつ病です。そのため、うつ病のこころの症状の特徴である悲しい気分や、憂うつ感が目立たないため、うつ病と診断することが難しい場合があります。こうしたからだの症状は、抗うつ薬の治療により比較的治りやすいといわれています。

 

うつになる原因

 うつ病になる理由は1つではありません。その人がもっている感受性や感覚、置かれている生活環境など、いくつかの要素が積み重なって、うつ病になると考えられています。 うつ病と関係のある要素を少しでも理解することで、うつ病を予防したり、自覚する手がかりになると思います。

 脳は、人が生きていく中で「歩く」、「走る」、「食べる」といった基本的な動作に関する命令をからだに伝えており、これによって人は日常生活を円滑に送っています。しかし、脳が命令を出すのはからだだけではありません。こころにも「意欲」、「食欲」、「記憶」などといった感情的および知的命令を伝えています。脳からからだやこころへの命令は、神経伝達物質やホルモンなどを仲介して行なわれます。この神経伝達物質の中で、脳からこころに元気を伝える物質が“セロトニン”と“ノルアドレナリン”です。これらは気分や意欲、食欲、記憶などを神経に伝達します。脳内の神経細胞から、セロトニンやノルアドレナリンが放出されると、図のような受け手である神経細胞の受容体に結合して、情報を伝達します。しかし、何らかの理由でこのセロトニンやノルアドレナリンが減ると、気持ちの活性化が伝えられずに憂うつ感などを引き起こしてうつ病になると考えられています。

 

うつ病になりやすいタイプ

まじめで、がんばりやの人。本当は疲れていませんか?
うつ病の発症には人間的なタイプも関係があると考えられています。
以下のようなタイプの人が、うつ病を発症しやすいといわれています。当てはまるものがある人はストレスをためやすいので、日常生活に注意しましょう。

・まじめ、几帳面でいつも何にでも完ぺきを目指す
・他人任せにできない
・職人気質;自分の能力の範囲できちんと仕事をする
・1つの物事に執着する
・かたくなで柔軟性に欠ける
・他人の評価に対して過敏に反応する
・自己否定的な考えをする
・悲観的な見方をしがちである
・二者択一的;白か黒か、100点か0点か、すべてをいっぺんに片づけようとする
・優先順位の設定ができない
・自尊心が低い
・感情の表現がへた
・自分の思っていることをなかなか口に出せない

 

ストレスとうつ病の関係

ストレスが大きくなると危険です。ストレスはたまっていませんか?私たちの日常生活にはさまざまなストレスが待ち構えています。
 「肉親の突然死」、「別居や離婚」といった悲しい出来事から、「昇進」、「出産」などといった一見喜ばしい出来事でも人によってはストレスになることもあります。そして、これらからうつ病が発症する可能性があります。しかし、うつ病になった原因がはっきりしている場合、比較的治りやすいといわれています。以下にうつ病のきっかけになるような出来事をあげます。

男性の場合 女性の場合
 ・転勤、昇進、出向
 ・失業
 ・退職
 ・経済問題
 ・仕事の過労
 ・病気
 ・失恋
 ・子供との離別
 ・友人や親近者の病気や死
 ・出産
 ・転居
 ・月経
 ・家庭内葛藤
 ・失恋

 

症候群について

近年の社会的な観点から取り上げられている「症候群」も、ストレスが原因となっているうつ病である可能性があります。
燃えつき症候群
あまりにもハードに仕事に打ち込みすぎ、からだやこころに過度にストレスがたまって、あるとき突然気力がなくなる。
空(から)の巣症候群
子供が独立して、関心を向ける対象が急になくなった。ようやく子育てが終わった年代の主婦がむなしさ、寂しさを感じる。
テクノ不安・テクノ症候群
OA機器についていけない不安が引き金でうつ状態になるケースやテクノロジーの世界にのめり込んで社会に適応できなくなり症状が進むとうつ状態となるケース
サンドイッチ症候群
上司と部下の“板ばさみ”で苦しくなった中間管理職がうつ状態に陥る
引っ越しうつ病
念願のマイホームを手にし、引っ越ししたはいいが新しい土地になじめずに沈み込む

 

治療法

うつ病は、治療を受ければ必ず治る病気で、適切な治療を早期に行えば、一般的に、6カ月から1年ほどで回復してきます。治療の基本は、薬物療法と十分な休息をとることです。
抗うつ剤の種類
 うつ病の治療には抗うつ薬が中心に使われます。抗うつ薬は、治療に使い始められてからこの40年間で目覚しく進歩しています。最初に開発された三環系・四環系と呼ばれる抗うつ薬から、研究開発が重ねられ、現在では副作用が少ないSSRI・SNRIというタイプの抗うつ薬が登場しています。

一般名
  三環系抗うつ薬  ・イミプラミン 
 ・アミトリプチリン 
 ・トリミプラミン 
 ・ノルトリプチリン 
 ・クロミプラミン 
 ・ロフェプラミン 
 ・アモキサピン 
 ・ドスレピン
 四環系抗うつ剤  ・マプロチリン 
 ・ミアンセリン 
 ・セチプチリン
 その他の抗うつ薬  ・トラゾドン 
 ・スルピリド
 SSRI  ・パロキセチン 
 ・フルボキサミン
 SNRI  ・ミルナシプラン



抗うつ剤のメカニズム
「うつになる原因」の項で説明したように、うつ病はこころとからだを活性化するセロトニンやノルアドレナリンといった脳内神経伝達物質の減少によって引き起こされると考えられています。
 うつ病の治療では薬によって、神経伝達物質がもとの神経細胞に再び取り込まれるのを阻害して、神経伝達物質の量を正常に近い状態に戻します。

1.従来の抗うつ剤
神経終末のセロトニンやノルアドレナリンを増やすことを目的として開発されたくすりですが、セロトニンやノルアドレナリン以外にも作用するため、くすりの副作用が比較的現れやすいといわれています。
(主な副作用)―口渇、便秘、排尿困難、眠気など

2.SSRI(選択的セロトニン取り込み阻害薬)
 SSRIは、最近開発された抗うつ薬で、世界中で幅広く使用されています。これは、従来の抗うつ薬が、複数の脳内神経伝達物質に作用するのに対して、SSRIはうつ病の原因となるセロトニン系だけに選択的に作用して、神経終末のセロトニンを正常に近い状態に調整することによりうつ状態を改善するといわれています。従来の抗うつ薬に比べ、必要な受容体のみに選択的に作用するため副作用が少ないとされています。

3.休養
 うつ病の患者さんは、もともとまじめで責任感が強い人が多いので、「仕事を休むなんてできない」、「自分が仕事を休んだりしたら、ほかの人に迷惑がかかる」と休養することをためらったり、拒んだりすることがよくあります。
 まず、こころとからだをゆっくり休めて、疲れを癒すことが一番の治療であることを理解することが重要です。回復するまでに、ある程度の時間がかかりますが、必ず治りますので、ゆったりとリラックスできるものをみつけ、治療に専念できる環境をつくりましょう。
自分ではどうにも環境がつくれないなら、医師に相談したり、家族や職場の仲間の協力を求めたり、入院を考えてみてはどうでしょうか。

4.治療を受けるときのポイント
・ まず、うつ病は、こころの弱さや努力不足が原因ではなく、病気であることを自覚することです。
・ うつ病は直線的に改善するわけではなく、「よくなったり、悪くなったり」を繰り返しながら、徐々によくなっていく病気です。あせらず、気長に治療に取り組むことも大切です。
・ くすりの服用は医師の指示に従うことです。抗うつ薬はのみ始めて数日たってから序々に効き始め、1~4週間のうちに効果が現れてきます。また、その後症状が安定しても再発を防ぐためにしばらく服用を続けます。自分で判断してくすりをやめたりしないようにしましょう。

 

周囲の人にできること

うつ病の治療には、家族や職場の人たちの助けが必要になります。うつ病について、正しい知識をもって、理解と愛情で支えてあげてください。患者さんに接する際には、次のことに注意しましょう。

うつの人と接するためのポイント
1.はげましは逆効果 。温かく見守りましょう
“頑張りたくても頑張れない”これがうつ病の患者さんの悩みです。そのため「頑張って」などという励ましの言葉はよけいに患者さんを追い詰めます。ただ、温かく見守ってあげることが何よりも励ましになるのです。

2.考えや決断を求めることはやめましょう
患者さん自身に決断を迫ることはなるべく避け、「夕飯はカレーにしようか」などというふうに、日常生活においてなるべくこちらから提案してあげるようにしましょう。

3.外出や運動を無理にすすめない
とにかくゆっくり休ませましょう。うつ病の治療の基本はくすりと休養になります。まずはゆっくり休ませて、患者さんのこころやからだに溜まった疲れをとってあげるようにしましょう。

4.重要な決定は先のばしにさせましょう
決断力が鈍って、優柔不断になっている患者さんに「仕事を休職するかどうか」というような大きな決断を迫るのは患者さんを追い込みます。患者さんが自分で決断するまでゆっくり待ってあげましょう。

5.家事などの日常生活上の負担を減らしてあげましょう
まじめで責任感の強いタイプの患者さんが多いために、病状が悪くても無理して家事などをしようとしてしまいます。なるべく家族の方が家事などの負担は減らしてあげるようにしてあげましょう。

6.できるだけ通院に付き添い、受診に同席しましょう
医師により多くの情報を正確に伝えるためにできるだけ受診に同席してください。また、医師の説明を患者さんと一緒に受けることでうつ病への理解が深まります。

7.きちんとくすりをのむように気をつけてあげましょう
患者さんが症状の軽減やくすりの副作用に対する不安から、自己判断でくすりの服用をやめてしまうことがあります。このようなことはうつ病の回復を遅らせるので、くすりの服用を続けるようにサポートしてあげてください。