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アスペルガー症候群

「アスペルガー症候群」は、発達障害の1つで、脳機能に偏りがある生まれつきの病気です。知的な遅れがないことで、病気と診断されることなく、そのまま大人になってしまうことが少なくありません。子どもの頃には、「ちょっと変わった子どもだな」という印象を持たれることが多いようです。大人になってから表面化するのが、社会性やコミュニケーション能力の欠如、興味の偏りの強さといった特性です。そのために、人間関係がうまく築けなかったり、社会人としてふさわしいとされる態度がとれなかったりするのです。

 症状の現れ方は人によってさまざまですが、多くの場合、成長の過程において「自分は他の人たちとどこか違っている」「なんとなく生きづらい」と感じます。生まれたときから一般的な人とは違う感覚を持ちながら、「変な人」と思われないようにと、周囲に合わせる努力をして生きていくのです。
 特に、知能の高いアスペルガー症候群の人は、「こういうときはこう反応すればいい」という知識を熟知していて、一般的な人との違いがほとんど分からない程度に振舞うことができます。しかし、社会に出るとどうしても曖昧な表現が多くなり、脳の特性上、想像力をうまく働かせられないために、「適当にうまくやっておいてよ」というような表現の意味がうまくくみ取れず、こういった状況に出会う度に混乱してしまうのです。

 

アスペルガー症候群の人が苦手とすること

以下に、アスペルガー症候群の人が苦手とすることをあげてみます。
あなたには、このような傾向はあるでしょうか?

1.言葉の裏の意味を読みとること
 言葉どおりに受けとめるという特性があるため、「何回聞いたら分かるんだ」と言われたときに、「まだ3回しか聞いていません」と素直に答ることがあります。言葉の裏の意味を想像することが求められえる、皮肉やたとえ話も通じません。「よくこんなすごいことができたね…」と皮肉を言われたとしても、「自分はすごいことをして褒められているんだ」と感じるのです。アスペルガー症候群の人にとって、言葉は「事実を伝達する道具」でしかありません。

2.物事を概念化すること
 他にも苦手とされるのが、「概念化」と呼ばれるものです。一般的な人は、木を見た瞬間的、それが「木」であることを認識しますが、アスペルガー症候群の人は、まず葉っぱを見て、また違う葉っぱを見て、やがて枝があり幹があることに気づいてから、ようやくそれが「木」であることを認識します。この例は、分かりやすくするために少し極端にしましたが、実際、これに近い感覚で細部にこだわるため、全体像が見えないということがよく生じます。仕事の作業効率がなかなか上がらないというのも、全体像が把握できずに、細部にばかり集中しすぎてしまう結果なのです。

3.動作を同時進行すること
 一般的な人は、話を聞きながらメモをとるなど、ごく自然に2つの動作を行うことができます。しかし、アスペルガー症候群の人は、話を聞くときには「聞くこと」にのみ集中するため、同時にメモをとるということに難しさを感じます。脳の特性から見ても、そのような力が求められる仕事には向いていないと言えるでしょう。
 こちらから指示を出すときも、要点を1つひとつ伝え、順を追って説明する必要があります。

4.臨機応変に行動すること
 物事の理解に時間がかかるため、臨機応変な対応をとても苦手とします。また、想像力を働かせることが必要になる急な予定の変更などには、ひどく戸惑ってしまいます。反面、数字や漢字などの不変的なものに対しては安心感を持てるのですが、「変動するもの」には強い不安を感じるのです。

5.選択的注意を行うこと
「選択的注意」というのは、たくさんの情報の中から、自分に最も必要な情報だけを取り出す能力のことを言います。たとえば、騒がしい場所で話をしていても、相手の声が聞きとれるのは、無意識で、それ以外の騒音にフィルターをかけることができるからなのですが、アスペルガー症候群の人は、全ての音が聞きとれてしまうため、相手の声だけに集中することができません。そのため、騒々しい場所をとても苦手とします。これは、視覚などの知覚も同様です。

6.アイコンタクトをとること
 相手の表情を見たときに、そこからその人の感情を読みとることが苦手です。これは、見たものの「動き」を解釈するときに用いられる、脳の「側頭葉」に障害があることと関わりがあると言われています。たとえば、相手が怒った表情で近づいてきても、自分に対して怒っているということが分かりません。表情が読めないということに加え、そのときの状況に合った表情をすることも得意ではないため、時に、「喜怒哀楽がないのでは」と思われてしまうこともあります。

7.人と交渉をすること
 狭い範囲で深い知識を得ることは非常に得意としているため、多くの情報を記憶することや、反復的な作業を根気よく続けることに優れた力を発揮することがあります。しかし、このような専門職で認められた場合、次に待っているのは「対人交渉」です。交渉するためには、1~5全ての要素が必要となるため、管理職に昇進した結果、対人関係がうまくいかずに大きな壁にぶつかってしまうことがあります。

 アスペルガー症候群の人は、日常生活の中のあらゆるものに考えをめぐらせ、1人で悩みを抱え込んでいることが多いため、周囲の人には、その苦しみがなかなか伝わりにくいかもしれません。しかし、実際はかなりの生きづらさを抱えながらも、必死で努力し続けているのです。

 

生きやすくするためにできること

 アスペルガー症候群は、生まれながらにして持ち合わせた脳機能の障害ですから、もちろん本人が悪いわけではありません。そういったことも含めて、本人が自分自身の障害を理解していくことが大切です。行動を変えていくためには、本人の自覚や努力に加え、適切なサポートを受けることが必要です。自分のどこが一般的な人と異なっているのかを知るために、どのような部分がそれに当たるのかを、家族や友人など、信頼できる人に客観的に教えてもらうことがとても役に立ちます。
以下に、行動にいて改善できる点をあげてみます。

1.話し方を覚える
 話し方の問題点としては、感情の起伏のない話し方、自分の興味のあることについて一方的に話し続けてしまうこと、悪気のないストレートな発言で相手を傷つけてしまうこと、比喩や皮肉、たとえ話が通じないことがあげられます。会話が噛み合わないことで、コミュニケーションが疎遠になってしまわないためにも、誤解を与えない話し方を覚えていきましょう。意味がよく分からなかったときは素直に質問し、ストレートな発言で相手を傷つけてしまったときは、他の言い方がなかったかを考えましょう。もしも、よりよい表現が見つかったときは、その言い方に変えていくことが大切です。
 また、1人で一方的に話しすぎていないかということにも意識するようにしましょう。「一方的に話しているな」と気づいたら、周りの状況を伺って、嫌がられていないかを確認し、もし嫌がられているようであれば、話すのをやめてみるようにしてください。上手にコミュニケーションをとっているなと思える人がいれば、その人の真似をしてみるのもいいでしょう。相手に誤解を与えないような話し方を身につけていくことがとても大切です。

2.服装に気をつける
 アスペルガー症候群の人の中には、入浴や着替えを極度に嫌がる人がいます。一見、身だしなみに気を遣っていないように思えますが、実は、独特の皮膚感覚が関係していると言われています。先ほど、一般的な人とは感覚が異なるということを取り上げましたが、皮膚感覚についても同じことが言えます。石鹸やシャンプーの感覚や、新しい服に袖を通したときの刺激が、とても不快に感じられるのです。
 しかし、あまりに身だしなみに気を遣わないでいると、周りの人に「だらしない人」という印象を与えかねません。これでは、社会生活を送るうえで大きなマイナスになってしまいます。入浴をせずに不衛生な生活を送ることで病気になったり、汚れた服を着続けることで、その臭いが周りの人を不快にさせてしまったりします。人間関係を悪化させないためにも、少なくとも、1日おきくらいでは、着替えや入浴をするように心がけましょう。

3.自分の得意分野をのばす
 アスペルガー症候群の人には、「興味の幅が狭く深い」という特徴があります。このことを、「得意分野には非常に強い」というように、プラスに捉えるようにしてみましょう。子どもの頃、誰も知らないような昆虫や動物の名前をたくさん記憶していたり、魚の特徴なら何でも答えることができたりしたという人も、決して珍しくないと思います。もしかすると、子どもの頃は「天才肌だ」と言われたこともあるのではないでしょうか。このように、得意分野について深く勉強することは大変よいことです。社会に出たときには、自信を持って得意な面をプラスに活かしていってください。

4.身の回りを片づける
「選択的注意」が不得意なこともあり、雑然とした環境では混乱してしまう傾向があります。自分にとって不必要な情報にフィルターをかけるということが難しいため、雑然とした環境だと、目や耳から入ってくる情報が多すぎて混乱してしまうのです。生活空間をできるだけシンプルに整えるよう心がけましょう。たとえば、仕事机の上には仕事に関するものだけを置き、仕事に関係のない本や写真、雑誌などは置かないようにします。また、本を読むスペース、趣味のことを調べるスペースなど、パーテーションなどを用いてスペースを区切るのもよいでしょう。これは「構造化」と言い、「自閉症スペクトラム」の療育でも実際に用いられている手法です。

5.ツールを使ってみる
 全体像を把握するのが難しい人におすすめなのが、「マインドマップ」というツールです。これは、1つの概念に関する枝葉を、イラストや写真を交えて図式化し、全体像のイメージ把握に役立てるという方法です。分かっている部分の枝葉は多いのに、そうでない部分は少ないという図を見ることで、自分に不足しているものが分かりやすくなります。
 他にも、コミュニケーションで困っているという人は、パソコンや携帯のメールを利用してコミュニケーションをとるのも1つの方法です。メールは直接顔を合わさない分、アスペルガー症候群の人にとっては、余計な神経を使わなくて済むメリットがあります。また、話の内容が明確に文章化されていることで、相手の意図を誤解してしまうことも減らすことができます。不適切な表情をしてしまったり、頻繁に聞き返してしまったりということもなくなるため、こちらから相手に誤解を与えてしまうことも少なくなります。メールの他にも、チャットを利用してコミュニケーションをとるという方法もあります。「誰とも意志の疎通ができない」と思っていた人でも、チャットを通して人との繋がりが得られ、孤独から解放されるというケースが多くあります。

 上記のことを、少しずつ取り入れて自分を変えていくことが、社会生活を送りやすくすることに繋がります。アスペルガー症候群だからといってあきらめてしまうのではなく、自分ができることから始めていくことがとても大切です。